審判員のために
- 1、一 般 心 得
- 公認野球規則9.00『審判員に対する一般指示〔原注〕』は、審判員として心得ておかなければならないことを詳しく述べている。これを熟読したうえで、次のことがらも参考にされたい。
- 1 規則書と競技者必携に精通すること。
- よき審判員は規則書に明るい。規則に通じることは、大きな自信にもつながり信頼も増す。また規則書と競技者必携は審判員の最大の味方でもある。いつでも規則書と競技者必携を携行すること。
- 2 審判員の連帯責任
- 一人の審判員の失敗は、当該審判員全員の共同責任である。常に連係動作に習熟し、万一他の審判員が持ち場にいなかったら、互いに助け合って必ずその穴を埋めなければならない。
- 3 ゲームのスピードアップに努めること
- 判定に不信を抱かせたりトラブルが多いと、ゲームは長引いて審判員の存在も目立ってくる。スムーズに試合を運ぶ審判員は、上手な審判員だといえる。
- 審判員は規則に忠実でなければならない。規則に忠実なことは審判員として厳格であり、公平でもあるということばかりでなく、ゲームに活気を与えることになる。活気のあふれたゲームこそ魅力があるのだ。無用なタイム≠熨蛯ォな障害である。攻守交代はかけ足を実行させよ。ゲームの前半、特に3回ごろまでは遅れがちであるからスピーディに進めるように努めること。
- 4 勇敢でそして公平であること
- 審判員は大勢の人の前で、瞬間的な出来事に対して、即座に裁定を下さなければならない。常に見たままを的確に裁定するだけでよい。審判員は邪念を持たず、常に公平でなければならない。
- 5 立派な社会人でなければならない。
- 球場の内と外とを問わず、マナーに注意し、かりそめにも他から非難を受けるようなことがあってはならない。あらゆる点でいつも模範となるよう心がけることが必要である。
- 6 健康に留意すること
- 審判員は精神的にも肉体的にも健康でなければならない。特に、審判員は長時間肉体と精神を酷使し続けなければならないからである。寝不足などは禁物である。ゲーム前は余分な湯水を飲まないようにするとか、用便を済ませておくなど、ちょっとした注意が大切である。
- 7 服装は端正に
- 決して新しい物でなくても、良く磨かれた靴、クリーニングされたシャツ、プレスされたズボンの着用を心がけることが、おのずから信頼と尊敬につながるものである。
- 8 審判用具の点検
- 常に点検を怠ってはならない。用具を軽快に使用できるように習熟することが大切である。
- 2、判定に関する心得
- 1 常にボールから目を離してはならない。
- 2 選手の邪魔にならないよい位置を占め、プレイに対し最も適切な角度と距離をとるようにする。
- 3 判定を下す前はセットポジションをとりプレイを注視せよ。走りながら裁定をしてはならない。
- 4 プレイの裁定を早まらず、プレイが完了するまで待つ。特にアウトの判定を下す場合は確保の確認が必要である。
- 5 きわどいプレイの裁定は、ジェスチャー、コールとも大きく強調すること。
- 6 常にどんなプレイにも対応できる心構えと態勢を維持すること。
- 7 もし、判定の一つに失敗しても、次の判定は正確に行え。埋め合わせは決してするな。埋め合わせは、失敗をもう一度やるより悪い。
- 8 他の審判員が「タイム」を宣告すれば必ず同調する。ただし、「ボーク」の場合は、プレイの成り行きを見極めた後に同調することもある。
- 9 トラブルが起きた場合は、まず抗議者の資格を確認せよ。そして「必要なことだけを聞き、必要なことだけを答える」、これがトラブル解決の秘訣である。なお、抗議に対して審判員が協議によって得た最終結論は、再抗議があってもいたずらに変更すべきではない。
- 3、任 務
- 試合は通常三人または四人の審判員によって行われるが、ときには二人または六人の審判員によって行われる場合もある。一人が球審でその他は塁審あるいは外審と呼ばれ、異なった位置を占めそれぞれの任務を持っている。
- 1 球 審
- 投球の判定にあたっては、インサイドプロテクターを使用する場合は、打者と捕手の間から見極める。アウトサイドプロテクターを使用する場合は、ホームプレートの後方中央で捕手の真上から見極める。いずれの場合も、判定が終るまで身体を動かしてはならない。
- フォースプレイの場合は、捕球と走者の関係がよく見える位置(角度)で裁定を行い、タッグプレイの場合は、プレイの妨げにならない範囲で近づき、プレイが最も見易い位置で裁定を行う。
- いずれの場合も、余裕をもって動き、停止をして裁定を行う。
- 一・三塁線近くの打球に対しては、すばやく前に出てラインをキープして判定する。この場合判定が早すぎないように注意しなければならない。
- また、プロテクターの操作やマスクの脱着に習熟することが、素早い行動につながり任務を遂行するために必要なことである。
- 任務は次の通りである
- (1) 試合を適正に運行するためのすべての権限と責任を持つ。
- (2) 「ボール」「ストライク」をコールし、それをカウントする。
- (3) 塁審が宣告する以外のフェアボールとファウルボールの宣告をする。
- (4) 打者についてのすべての裁定をする。
- (5) 通常塁審が行うことになっているもの以外のすべての裁定をする。
- (6) フォーフィッテッドゲーム(没収試合)の裁定をする。
- (7) 試合前に本部で確認された打順表を受け取る。なお試合中、出場プレーヤーに変更があれば発表する。
- (8) 特別グラウンドルールの必要なときはそれを発表する。
- (9) 特別継続試合に入る場合はそれを発表する。
- 2 塁 審
- 一・三塁の塁審は一・三塁ファウルラインの外側、二塁塁審は一・二塁または二・三塁の延長線方向に位置し、打球、送球に対して速やかに適切な位置をとる。塁審の位置や動きは人数によって異なってくるので、審判メカニクスを参照し、習熟することが大切である。
- フォースプレイ、タッグプレイの裁定は、球審と同じ要領で行う。
- 「タイム」「ボーク」を宣告するときは、特別な場合を除き、全員が一致した宣告をしなければならない。
- 任務は次の通りである
- (1) それぞれの分担する塁におけるプレイを裁定する。
- (2) 「タイム」「ボーク」等の裁定については、球審同じ権限を持つ。
- (3) 規則を適用して、規律を維持することについては球審と同じであり、試合の運行についてはあらゆる方法で球審を援助しなければならない。
- 3 外 審
- ポールと一・三塁塁審との中間で、ファウルラインから1メートルないし2メートルフェア地域内に位置する。この際、塁審や野手と重なり視野の妨げとならないように注意すること。
- 任務は次の通りである
- 通常一・三塁塁審を超えた打球を判定する。
- 外審の任務は直接得点に影響するものが多いだけに十分な注意が必要である。特にポール際の飛球は、あまり打球を追わずに眼で迎えながら身体を回し、ラインをまたいで打球がポールのどちら側を通過したかを見極めて判定する。
- また、フェア地域のフェンス付近や地上寸前で捕球するようなプレイには、適切な角度をとり近づいて判定しなければならない。